遺留分制度の見直し
遺留分制度について見直しが行われ、令和元年(2019年)7月に施行されました。 ここでは、「遺留分制度の見直し」についてご説明します。目次
遺留分制度とは
そもそも「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保証されている相続分のことです。 例えば、被相続人(亡くなった方)が遺言書に「長男のAに全財産を相続させる」と記載していた場合、遺言書通りに遺産を分割すれば長男のA以外は財産を受け取ることができません。 被相続人の財産をまったく相続できないとなると、他の相続人たちは生活を維持できなくなる恐れがあるため、財産の一定割合を相続する権利が保証されています。遺留分の割合
では、遺留分は具体的にどれくらい保証されているのでしょうか。 遺留分は相続財産全体の1/2(父母のみが相続人の場合、1/3)で、2/1をそれぞれの法定割合によって分割します。 相続人の組み合わせにより遺留分が異なりますので、具体例は以下をご参照ください。相続人:配偶者+子の場合
配偶者の遺留分:全体の遺留分1/2×法定相続割合1/2=1/4 子の遺留分:全体の遺留分1/2×法定相続割合1/2=1/4 ただし、子が複数いる場合、子の遺留分1/4を子の数で割った数字がそれぞれの遺留分になります (子が3人の場合の1人当たり:全体の遺留分1/2×法定相続割合1/2×1/3=1/12)相続人:配偶者+父母(祖父母)の場合
配偶者の遺留分:全体の遺留分1/2×法定相続割合2/3=1/3 父母(祖父母)の遺留分:全体の遺留分1/2×法定相続割合1/3=1/6 ただし、父母(祖父母)が複数いる場合、父母(祖父母)の遺留分1/6を父母(祖父母)の数で割った数字がそれぞれの遺留分になります (2人の場合の1人当たり:全体の遺留分1/2×法定相続割合1/3×1/2=1/12)相続人:配偶者+兄弟姉妹の場合
配偶者の遺留分:全体の遺留分1/2 兄弟姉妹の遺留分:なし 第3順位の兄弟姉妹には遺留分が無いため、全体の遺留分=配偶者の遺留分となります。相続人:子のみの場合
子の遺留分:全体の遺留分1/2 ただし、子が複数いる場合、子の遺留分1/2を子の数で割った数字がそれぞれの遺留分になります (子が3人の場合の1人当たり:全体の遺留分1/2×1/3=1/6)相続人:父母(祖父母)のみの場合
父母(祖父母)の遺留分:全体の遺留分1/3 第2順位の父母(祖父母)のみが相続人の場合、全体の遺留分は1/3になります。 そして、父母(祖父母)が複数いる場合、父母(祖父母)の遺留分1/3を父母(祖父母)の数で割った数字がそれぞれの遺留分になります (2人の場合の1人当たり:全体の遺留分1/3×1/2=1/6)相続人:兄弟姉妹のみの場合
兄弟姉妹には、遺留分は存在しません。遺留分制度の問題点
遺留分の見直しが行われることになったのは、これまでの遺留分制度では様々な問題が発生していたからです。 具体的には、以下のような問題が発生していました。①遺留分減殺請求権の行使によって共有状態が発生する
例えば、Xさんが経営している会社の長男B男さんが会社の承継者と決まっているため、Xさんは「会社の本社社屋である不動産Aを長男B男さんに相続させる」という遺言書を残したとします。 改正前は、Xさんが亡くなり長女C子さんから遺留分減殺請求権が行使されると、「不動産AがB男さんと長女C子さんとの共有状態」になってしまうことがありました。 このようなケースでは、権利関係が複雑になり、事業承継の支障となる恐れがあります。②共有割合は大きな額になることが多い
共有割合は、不動産の評価額を基準にして決まるため、大きな額になることが多いです。 そのため、持分権の処分に支障が出る恐れがあります。改正後(令和元年7月1日施行)のポイント
遺留分制度の見直しによって、変更となった点を見ていきましょう。①不動産の共有状態を回避できる
遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができるようになりました。 言い換えれば、不動産を遺贈や贈与で受け継いだものは、金銭を支払えば不動産を共同で所有する必要がなくなります。 これにより不動産の権利関係が複雑化することを避けることができます。②遺留分侵害額請求に対する支払いの猶予
遺贈や贈与を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができるようになりました。主な相続手続きのメニュー
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